契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 渚は呟いた。
 千秋には随分迷惑をかけてしまった。結婚のことがバレた後、彼女は父にこってり搾られたのだ。

『私はお父さんの雷には慣れているもの』

と彼女自身はそれほど気にしていないとはいえ、申し訳ない気持ちは拭えない。
 それなのに、それでも渚のことを心配してくれている。

「もちろんです。大切にします」

 誠実に答える和臣に満足そうに微笑んで、千秋がまたため息をついた。

「渚は可愛いしいい子なんだけど、ちょっとアッチ方面がダメだったのよ。だからどうしようかなと私も悩んでいたんだけど、瀬名さんみたいな大人な方なら安心だわ。よく導いてやってくださいな」

「ちょっ⁉︎ お姉ちゃん、なに言ってるの⁉︎」

 またもや声をあげる渚をよそに、龍太郎と祐介は平然として鍋を突いている。これが千秋の通常運転なのだ。
 和臣が「わかりました」と苦笑した。

「もうお姉ちゃんったら、変なこと言わないでよ」
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