契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 渚がじろりと睨んでも、ちっとも千秋はこたえない。

「変なことじゃないわよ」

と、口を尖らせた。

「渚。今どき、ファーストキスの相手と結婚だなんて、普通じゃないわ。異常事態なのよ、ある意味ファンタジー。受け入れてくださった瀬名さんに感謝しなきゃ」

「ファッ……!」

 渚は真っ赤になって、お箸を取り落としてしまう。
 家族団欒の場でいったいなにを言い出すのか、この姉は!
 どうにかして黙らせなくてはと渚は思う。
 でもそれより先に、龍太郎が呟いた。

「…………だ」

「え?」

 聞き取れなくて、千秋が即座に聞き返す。

「なに? お父さん」

 すると龍太郎は、ぶすっとしてとんでもない言葉を口にした。

「渚のファーストキスはワシだ」

「…………はぁ⁉︎」

 渚と千秋は同時に声をあげてしまう。
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