契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 だが和臣はその手を離さなかった。

「ダメだ。雪の下はなにがあるかわからないんだぞ。よく確認してからでないと。……まったく、相変わらずだな渚は」

 そう言って呆れたように見下ろす和臣に、渚は口を尖らせた。

「相変わらずってなんですか」

「相変わらずは相変わらずだ。危なっかしくて、目が離せない」

「目が……! ……そんな小さいこどもみたいなこと言わないで下さい。私はちゃんとした大人です」

 寒さで赤くなった頬を膨らませて渚は和臣を睨む。でもすぐにぷっと吹き出してふふふと笑った。
 心が通じ合ってからの彼は、大抵こんな風だった。
 少し心配症で過保護で。
 渚の方は、そんなに心配されるほど、危ないことはしていないと思うのだけれど、彼からしてみればどうやらそうではないらしい。
 なんだかお父さんみたいなんて思う時もあるくらいだ。でもそれがなんだか心地いいと思うのだから不思議だった。
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