契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「あー気持ちいい!」

 渚は深呼吸をして新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ。そしてあることに思いあたり、首を傾げた。

「……だけど、こんなに積もっているのに、誰も雪合戦しないんですね」

 真っ白な景色の中は見渡す限り人はいない。だから昨日降った雪を誰にも踏み荒らされることなく、渚と和臣が独り占めできているというわけだ。
 でもこんなにたくさん雪が降ったのだからみんな家から出てきて、雪だるまくらい作ったらいいのに……。
 和臣が吹き出した。

「しないよ! 雪合戦なんて!」

 そして、はははと声をあげて笑っている。

「この辺の人間は雪にはうんざりしてるんだ。はしゃいで人型を作ろうなんて言う人間は……、まぁ子どもくらいだな」

 また渚を子ども扱いするようなことを言って和臣は笑い続ける。
 そんな彼を渚はじろりとにらんだ。
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