契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「渚?」

 突然黙り込んだ渚に和臣が不思議そうに首を傾げて覗き込む。
 渚は目をパチパチさせて彼を見つめた。

「和臣さん」

「ん?」

「私、和臣さんを好きになれてよかった」

 渚は繋いだ手にぎゅっと力を込めた。

「私……、おばあちゃんとお母さんが亡くなってからは、今みたいに、大きな声で笑ったり、はしゃいだりしていなかったような気がするの。こんな風に目の前のものを綺麗だと思うことも……」

 和臣が瞬きをして、白い息を吐く。そして繋いだ手を握り返した。

「当然だろう。とても大切な人を失ったんだから。もとの自分に戻るのには相当な時間が必要だ」

「和臣さんが、また私の時間を動かしてくれたの」

 渚の頬を一筋の光が伝う。
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