契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「どうしたらいいか、わからなかったの。私も、お父さんも、お姉ちゃんも。……和臣さんが、いてくれなかったらきっとまだ皆止まったままだった」

「どうかな」

 和臣が呟いた。
 そして眩しそうに目を細めて、どこまでも続く雪景色を眺めた。

「確かになにかきっかけが必要だったようには思えるけど。でもそのきっかけは、渚だったんじゃないか」

「……え?」

 渚は小さく首を傾げる。
 和臣が視線を戻して、渚を見つめた。

「どうすればいいかわからなくても渚は自分で動こうとしていたじゃないか。無茶苦茶でもなんでも……。きっかけは渚だよ。俺はただ、そんな君に惹かれて目が離せなくなっただけだ」

 無茶でもなんでもいいから、動いてみようと、もがいていた自分。
 その自分が和臣と関わったことが、いい結果を生んだ。
 でもその和臣との見合いは父がセッティングしたものなのだ。
 それを考えると、悩んだことも、泣いたことも、すべての出来事が愛おしく思える。
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