契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 こんな理由では父は納得などしないだろう。でも本当の理由を言えない以上、これくらいのことしか言えなかった。
 龍太郎が、深い深いため息をついてから、口を開いた。

「世間を知る必要などお前にはない。しっかりした人と結婚すれば、それでいいんだから……」

「そんなの嫌よ!」

 頭ごなしに言う父に反発を覚えて、渚は思わず声を荒げた。

「私だって、自立した大人なのよ! 誰かに寄りかかって生きるのは嫌!」

 でもそこまで言って、しまったと思い直し口を閉じた。龍太郎はこんな風に反抗すればするほど頑なになる。本当に自分の希望を叶えたければ、感情的にならずに論理的に順序だてて説明しなければならないのに。
 父も納得さえすれば案外すんなりと聞き入れてくれることもある。
 だからここは冷静に今はまだお見合いの時期ではないと説得しなければならないのに……。
 だが時すでに遅し。龍太郎はますます険しい表情になって口を開いた。

「お前はすぐにそうやって、感情的になる……。いったいそれのどこが大人だというんだ、大体お前は……」
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