契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 父のお説教が始まって、渚はあぁやっちゃったと心の中でため息をついた。
 こうなると長いのだ。
 いかに渚が頼りない甘ったれかということを何度も何度も繰り返す。こうなると何を言っても焼け石に水、それどころか火に油を注ぐようなものなのだ。
 早く終わらせたければ、黙って話を聞いているフリをするしかない。
 渚は手元の湯呑みに視線を落としてただ神妙に聞いているフリをする。この話が終わったらどうやって切り替えそうかと頭をフル回転させながら。
 一方で龍太郎の方は、相変わらずくどくどと説教を続けている。

「……だから、彼なら信頼できると思ったんだ。とにかく会って話をしてみなさい。わかったか? 渚?」

 返事を求められて渚はハッとして顔を上げる。
 まずい、聞いてなかった……。
 ここで"え、なにを?"などと聞き返してしまったら、また長くなってしまう。
 どうしよう……そう思って顔をしかめた渚を、父はどう思ったのか、言い聞かせるように話しを続ける。

「とりあえず結婚するかどうかはさておいて見合い自体は決まったことだ。彼の方にも時間をもらってある。来週の日曜日、グランドホテルのラウンジだ」
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