契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 あぁお説教からお見合いの話に戻っていたのねと渚は納得した。
 それにしても相手にももう話をしてあるなんて随分とバカにしているじゃないか。渚の都合も聞かないで。
 相変わらずお父さんは横暴ね、とそこまで考えて、そういえばと渚は首を捻った。
 相手はいったい誰だろう?
 父のこの口ぶりからして、おそらくもう名前を言ったことは確かだった。
 父の説教を聞き流しているうちに、どうやら相手の名前も聞き流してしまったらしい。
 でももちろん"お父さん、彼って誰?"と尋ねることはできなかった。聞けば父の話を聞いていなかったことがバレてしまう。
 そんな渚の内心はよそに父はどんどん話を進めていく。

「彼なら、知らない仲ではないだろう。でも事務所ではそうプライベートの話もできんだろうから、一度会ってじっくり話をしてみたらどうだ? 彼が、信頼できる弁護士なのはお前もよくわかっとるだろう?」

 その言葉に渚は驚いて目を見開く。では、相手は同じ事務所の弁護士なのだ。
 でもいったい誰?
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