契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 そう言って瀬名は、少しいたずらっぽい視線を渚に送る。
 それを受けて、渚は思わず笑みを漏らした。

「本当ですか? 先生の方こそ意外です。ふふふ」

 彼は事務所のエース的存在で龍太郎の信頼も厚いと言われているのに。
 ひょっとして瀬名先生も自分と同じように、お父さんの説教を聞き流してる? なんてことを考えて渚は笑いが止まらない。
 その渚に、目の前の瀬名が少し驚いたように瞬きをして、コーヒーカップを持ち上げた手を止めている。
 それに気が付いて渚は笑うのをやめた。

「? 瀬名先生? どうかされたんですか?」

 渚の問いかけに瀬名がハッとしたようにコーヒーカップを下ろして首を振った。

「いや……なんでもない。それより君は、お見合いの相手が音川さんだと思ってたんだよね。ということは、そのかわいらしいワンピースもあの人のため? 普段の君とはまた全然違った感じで素敵だけど。もしかして相手が私でがっかりだったかな」

「え!?」
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