契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 だからそんな彼と同じ職場とはいえただの事務員である渚が一緒にランチを取るなどという機会は、普通ならばありえない。

「興味がないか。案外きついね佐々木さんは」

 音川はニヤリとされて、渚は少し慌てて口を開いた。

「そ、そうじゃなくて、私は行かない方が皆さん気楽でいいと思いますから」

 本当はこっちの方が本音だった。
 でもそれを聞いた音川は、残念そうに肩をすくめた。

「べつに、気にすることないのに」

 渚はそれになんと答えていいのかわからずに曖昧な笑みを浮かべる。気にしなでいてくれるのは今ここにいる音川くらいだろうと思いながら。
 音川が渚の机を覗き込んで、また大袈裟に声をあげた。

「佐々木さんは今日はお弁当? うまそうだなぁ! 彩りもいいし、うん」

「ありがとうございます!」

 音川の言葉に渚は、嬉しくなって頬を染めた。

「毎日自分で作ってるの? 残業になる日だってあるのに、えらいなぁ」

「好きでしてることですから」
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