契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました

『そんな危なっかしい話に乗る奴はいない』

と自ら彼女に告げておきながら、最後は彼女を説得するかのように結婚を決めた。
　彼女の突拍子もない計画を成功させられるのは自分だけだと主張して。
　不思議な気分だった。
　あの時彼女の向かいに腰掛ける瞬間までは、確かに見合いの話を断るつもりだったというのに。
　彼女が見せる意外な一面、花が綻ぶような笑顔、そしてその真剣な眼差しに吸い寄せられるように目を奪われ、彼女の話に耳を傾けずにはいられなかった。
　常識ではあり得ない無謀で無茶苦茶な計画、でもそうまでしてでも自らの夢を叶えないという熱意が、和臣の心の奥のなにかを揺さぶった。
　家族の事情に翻弄されて思うように目指す道を進めないというもどかしい気持ちは和臣にも覚えがあった。
　これは人助けだ、と和臣は自らに言い聞かせた。