契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 だいたい無条件で信頼している様子の音川だって、ただ"結婚はしない"と言っているだけで、無害だというわけでもないだろうに……。
 これは人助けだ、ボランティアだ。
 自らの目標に向かって無我夢中に進む彼女を邪な思いで近づく奴らから守るための結婚だ。
 彼女が夢を叶えるまでの間、ただ自分はそばにいて、紳士的に彼女の夫を演じているそれだけでいい、簡単なボランティア……。
 だが一方で、ただそばにいるというそのこと自体をどこか楽しみにしている自分がいるのも事実だった。
 自分はどこかにアパートを借りるから結婚生活は別々でと主張する彼女を、それでは佐々木先生を欺くことはできないと首を振り、自分のマンションへ来るようにと説得した。
 今まで、どの恋人にも自分のプライベート空間へ入らせることはなかったのに。
 まったく……。
 本当に、俺はいったいどうしてしまったんだと和臣が再びため息をついた時、マウスの脇の携
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