その一瞬を駆け抜けろ!
「どうしたー、仲川、珍しいなー元気にしてたか?」
から始まり、お互いの近況報告やなどを話す。
村山が
「もうお前も3年になるのか?早いなぁ。
まだ陸上、やってるんだろ?
どうだ?相変わらず、走るの好きか?」
と聞かれ、わたしは、少し考えながら
「走るの、好きだよ。でも…
それだけじゃだめなのかな?先生・・」
という問いかけに
村山は中学時代の薫を思い出していた。
「うーん。中学のときから仲川は、
あまり欲がなかったよなー。
1位じゃなくていい、みたいな・・・」
「えっ?先生、気づいてたの?」
「そりゃー気づくさ。お前、2位でも3位でも
さほど悔しそうにしてなかったし、走り方を
変えたいとか、相談されたこともなかっただろ?」
「あははっ・・そっか・・
そうだったね、わたし・・・」
「楽しく気持ちよく走れたら
それでいいって感じだったもんなー」
「そうそう、それでいいと今まで思ってたの、
でも・・・」
「それを誰かに何か言われたのかー?」と聞かれ
わたしは、頷いた。