その一瞬を駆け抜けろ!
「そうかぁ…」と、少し考え、
「仲川は、陸上でどうにかなりたいとか、
スポーツ推薦で、高校へ行きたいとか、
言う奴じゃないだろうなと思ってたからさー」
「うん……
別に高校でも陸上やろうと思ってなかったし…」
「だよな……俺も、もっと上を目指せ、
とか、言ったことなかったよな?
仲川に、素質があるのは認めてたけど、
向上心なんて、無理して植え付けるものでも
ないと思ってたしさ、
まして、成長期の子どもたちに身体に
影響が出るような厳しいだけの練習も
させたくないと、思ってるし。
難しいよな…結果にこだわると、
好きなだけじゃだめなのか?ってなるよなー」
「うん…」
「でもさ、お前、それを指摘された
ってことは、その人に期待されてんだよ」
「そういうもん?」
「そういうもんだ…期待しないやつには、
そんなこと言わないからさ」
というと、とわたしに目線を合わせながら
少し明るい表情を向け、
「ここはさ、一度くらい結果にこだわって
レースをしてみてもいいんじゃないか?
俺、お前が走る姿を見るのが、
いつも楽しかったの思い出したわ。
俺も応援してるからさ、やってみろよ!」
とわたしの背中を押した。
村山と話をしてるうちにわたしも自ずと
答えが見えてきた気がした。
最後一度くらい…やってみる?
結果にこだわる、レースを。
わたしは、村山にお礼をいい、職員室をあとにした。