その一瞬を駆け抜けろ!

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そんな二人の様子を
少し離れたとこから見ていた俺とクロセン。

みんなの
アップの様子を見ながら、クロセンは、

「沢田ー。
薫ちゃん、あさイチ、俺のとこ来たぞ…
お前ねー、もうちょいうまいやり方、
あったよなー?」

「はい…」

と俺は、少し申し訳なさそうにする。

「俺はね、あのままでいいと思ってたんだよ、
薫ちゃんは。

なにより走るのが楽しそうだったし、
一人くらいいてもいいじゃん、
勝ち負けにこだわらない子、

なのにさ…
何をどんな風に言ったんだかわからないけど、

お前さんの想いを薫ちゃんに託しちゃうのは、
ちょっとまずくないか?

指導者としては、失格だなー」と

クロセンにしては、
厳しい言葉を投げつけてきた。

「あははっ…気づかれちゃいました?」

と苦笑するしかない。

「わかるさ…こっちは何年、『先生』
やってると思ってんの?だめだよ・・・

あまりいろんな意味で彼女を追いこんだりしちゃ…

薫ちゃんが辛くなるだけだよ?わかってるー?」

というと

俺は、前髪をクシャと掴みながら

「はい…でも…やる気になってくれたみたいで…」
と答えると


「んー。俺はあまり賛成できないな・・・」

と、歯切れが悪いクロセンだったが、最後には

「まぁ、でもさ、お前に任せるよ。

彼女の底力も見てみたいしね、
でも、指導者としての域を
超えないように気を付けるんだな」

と忠告ともとれる言葉を言い残し、
クロセンは、フィールドメンバーに
声をかけながら去っていった。

『指導者としての域・・・』

クロセンに言われた言葉には、
俺もドキッとさせられた。

自分でもはっきりしない感情を
少し気づかされた気がした。

まだ認めたくなかったんだけどな…
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