その一瞬を駆け抜けろ!
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新学期を迎え、
わたしの高校生活最後の一年が始まった。
わたしは、自主的に朝練を始めたのだが、
都合がつく日には、何人かの部員が集まって
くれるようになっていた。
春の朝は、気持ちがいい。
今日もトラックの反対側から、
わたしに向かって大きく手を振り、
「薫ちゃーん!おはよーっ」と、
穏やかな朝にでっかい声で挨拶を
振りまいてくる彼は、
無駄に元気が取り柄で部のムードメーカー、
2年の【芦田 公平】だ。
わたしの朝練に付き合ってくれる彼は、
中距離が専門の400,800mを得意としている。
放課後は、また通常通りの練習。
ここ最近、沢田さんが顔を出す日が
増えたような気がする。
沢田さんが練習に参加する日には、
必ずわたしのスタートダッシュに付き合って
くれるようになっていた。
わたしは、いつもスタートのコンマ何秒か
出遅れるらしい。自覚がなかった…
マネージャーがならすピストルの音が
『パーンッ』と、グラウンドと響き渡る。
わたしの課題は
スタートとゴール手間の5メートル。
沢田さんにアドバイスを受けながら
スタート、ゴールを意識し練習する。