その一瞬を駆け抜けろ!
部員たちは、アップが終わると、
それぞれトラックとフィールドに
分かれて記録に入る。
トラック競技は、競う相手がいたほうが
タイムが伸びる傾向があるので、
実力の近い者同士が一緒に走る。
わたしは、2年の後輩の男子が一緒に
走ることになった。
タイムトライアルは2本。
1本走りインターバルをとって2本目を走る。
一緒に走る後輩は、少し緊張気味に
「あの…ほんとに薫さんと一緒に走る相手が、
僕でいいんでしょうか…」と
自信なさげに聞いてくるので
わたしは、彼を元気づけるために
「良いも、悪いもなしだよ!
こちらこそ、手加減なしで、お願いね!
お互い、ベストが出るように頑張ろう!」
と彼の肩をポンポン、と叩くと
「はいっ!よろしくお願いします」
と元気よく返事してくれた。