その一瞬を駆け抜けろ!
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俺は、この日、薫なら、
難なく決勝まで残るだろう、
という確信があり、他のOB、OGと一緒に
お昼過ぎに、競技場に到着した。


他の部員から薫の予選のレースの様子を聞くと
懸念していたスタートの出遅れと、走りに
少し不安を覚えたが、タイム的には、
順当に決勝まで残れるだろう、と踏んでいた。


ここまで来たらもう自分には、何もできない、
と分かっているつもりだったが、

どうしても薫に一言、声をかけたくなり、
アップグラウンドに向かった。

が、
森永と薫の仲が良さそうな様子を見て、
慌てて引き返してしまった。


『慌てることなんてあったか?』


と自分の行動に疑問を持ちつつ、薫に対して、
後輩以上の感情が湧き上がってきていることを
自覚していた。

そして自分に対する自信の無さから、
前に踏み出せないことに苛立ちを覚えた。

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