その一瞬を駆け抜けろ!

『わかってる?』と言われてみても
わたしには、すべての言葉を
すぐに解釈できるものでもなく

返事ができない。

ただ簡単に『わかりません』とも言えない。


言葉が出てこないわたしに、沢田さんは

「俺もね、今年から就活もあるし、
こうやって練習を見られるのも次の大会まで
なんだよね…

薫ちゃんたちにとって最後の大会ね。
だから、最後の最後本気を見せてほしい」

というと、わたしの様子を伺ってきた。

わたしは、沢田さんに言われたことの
半分も咀嚼できないまま俯きながら、

「…沢田さん、すみません…

えっと・・・
ちょっと考えさせてください…

頭が混乱してて、時間をください。

今日は、お先に失礼します…」

と、言い、その場の張り詰めた空気を
早く打ち破りたくて、沢田さんに勢いよく
お辞儀をし、
急いで部室に逃げるため駆け出した。

でもなんで、あんなこと急に…

みんなの顔がまともに見られないな…
と思いながら、静かに部室のドアを開けた。

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