その一瞬を駆け抜けろ!
追いコン恒例、果たし状対決
それから月日は経ち、それぞれ進路が決まり、
桜が芽吹き始めた頃、
わたしたちは、高校を卒業した。
卒業式から3日後、部内の恒例行事、
『陸上部恒例、3年生を追い出すコンパ』
通称、『追いコン』が校舎で開かれた。
後輩やOB、OGが軽食や出し物を
用意してくれる送別会のようなものだ。
クロセンの乾杯の音頭で会が始まり、
ジュースを飲んだり、お菓子を食べたり、
ワイワイ話をしたり、
このメンバーで過ごせる最後の日。
この日は、
久しぶりに沢田さんの姿もあった。
会うのは、あの大会以来だ。
沢田さんとも少し話をしたが、
結局、あのキスの意味も曖昧で、
キス自体がなかったことなんじゃないか、
と、最近思うようにしていた。
だって、悔しいもん、
キス一つで縛られるなんてさ!
会の終盤にさしかかる頃、
みな手を止め、
前に整列した3年生に注目する。
3年生は、後輩への一言と共に
これからの進路を発表し、
挨拶をすることになっている。
森永も咲も自分の挨拶を終える頃には、
目が真っ赤にしながら、涙を堪えていた。