その一瞬を駆け抜けろ!
ーーーーーーー
「うっわ・・・」と
俺は、力なくその場にしゃがみ込み、
「もぉーっ!くそぉ!二人きりになったときに
ちゃんと言おうと思ったのに台無しじゃないか・・・」
と、抗議すると
「えーっ!それは、ちょっとズルくないですかー?
そんな抜け駆け、通用しませんよ!」
と、すかさず森永が突っ込んでくる。
奴も薫が好きな一人だ、わかってる、薫はモテる。
俺もここまで言われたら黙ってられない。
髪の毛をクシャクシャとかきあげ、
覚悟を決め、再びたちあがると
薫の目の前に立ち、
「薫、好きだ。この先、いろいろあると思うけど、
一緒に乗り越えていってほしい。
離れたくないんだ…付き合ってください」
と右手を前に差し出した。
すると薫は、顔を真っ赤にしながら、
手で口元を覆うと涙をポロポロ流し、
「うそ…っ」と、
かろうじて聞こえる声で呟く。
「ホントだ」と即答する俺。
そしてどうしてみんながブーイングを
始めたかを説明した。
「実は、あのときのキス、
この中の何人かに見られてたんだ…」と白状した。