その一瞬を駆け抜けろ!
あのとき、薫は気づいてなかったが、
薫を探しにきた数人にキスを見られていたのだ。
すると薫は慌てながら、驚きを隠せず
「えっ?えっ?そうだったのー!?
うっそぉ…!!」
と叫ぶと、
力なくしゃがみ込み、両手で顔を覆った。
「……で?薫、どうする?この右手」
と俺が聞くと
しばらくして薫は、意を決し立ち上がると、
「もぉーっ!この展開は聞いてなかった!!」
と怒りながら、涙を流し、少し笑って、
表情をコロコロ変えながら、俺の右手を手に取り
「お願いします」とこたえてくれた。
この状況には、さすがにクロセンも困り果て
「あぁ…沢田…どうすんの…
これ、この状況…さぁ…
このあと俺から卒業生への感動的な
メッセージを送ろうと思ってたのに…台無し…」
と落胆した様子で言う、
部員たちは、
歓声、悲鳴、落胆の声が入り混じり
興奮冷めやらぬまま、締りが悪いまま
追いコンは終了し、
俺と薫は顔を見合わせ苦笑いした。