その一瞬を駆け抜けろ!
日が完全に傾き、
あたりが薄暗くなってきた頃、
仕事を終えた薫が、一人で通用門から出てきた。
それに気が付き、こちらも急いで歩を進める。
薫は、こちらの姿を確認すると
驚きを隠せない表情で、俺に駆け寄ってきた。
「えっ?ど…どうした…の?純也…」
と言い、動揺を隠せていなかった。
ちょっとしたサプライズ成功。
「仕事で近くまできたから…」と言うと
「えーっ?今朝、そんなこと言って
なかったじゃない…本当にどうしたの?」
と疑いの目を向けてくる薫。
最近、薫と同棲を始めたばかりだ。
とりあえず迎えに来たから、
一緒に家に帰ろうとなり、
最寄りの駅まで歩き始める。
確かに仕事というのは、口実で
「薫先生をみてみたくって」というと
「えぇっー!いつから見てたの?」
と可愛く訴えてくるので
「鬼ごっこから少し、かなー」というと
「うわぁ…手加減なしの鬼ごっこね」
と苦笑いしながらいう。
「でも薫が、想像以上に可愛い先生で
グッときちゃった…」というと
「え?本当、どうしたの?純也?」
と可愛く覗き込んでくるので堪らず…
「薫、俺と結婚してほしい」
と言葉が自然と溢れてきた。
本当は、もっとカッコつけたかったのに、
なんの用意もしてない、なんの変哲もない
帰り道でプロポーズだった。