おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

シルヴィア姫がリサという偶然にも梨沙と同じ名前の侍女と入れ替わり、メイド姿で王子扮する従者に愛を打ち明けるページを開いた。

お気に入りのシーンで何度も読んだから、絵本には開き癖がついてしまっている。

次のページは姫のドレスを着た侍女と、王子の格好をした従者が愛を語っているシーン。互いに自分は召使いだということを黙っていて、相手は高貴な身分だと信じている2人。

例え身分が違えども気持ちは変わらないと強く想い合う彼らもまた、シルヴィア姫と王子が真実を打ち明けたおかげで、何の障害もなく結ばれることが出来た。

姫と王子。侍女と従者。
それぞれ正しい相手に惹かれていた。

姫と王子の入れ替わりという嘘から始まったドタバタ劇は、誰も不幸になることなくみんながハッピーエンド。

読み終わったあとの幸福感に、梨沙は何度助けられて来ただろうと絵本をぎゅっと抱きしめる。


寂しくて眠れない夜も、嫌なことがあって泣きたい時も、いつもこの絵本を読んで幸せを与えてもらった。

ぼんやりとしか思い出せない母の形見だと思えば、なお大切に感じた。

何度読んでも幸せな気持ちになれる絵本を胸に抱き、梨沙はいつの間にかうとうと眠りに落ちた。



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