おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~
「私は無欲なんかじゃないですよ」
「そうか?」
「私が『欲しいもの』は、ジルとの時間です。お忙しい王子様をひとり占めしたいだなんて、とっても贅沢です」
肩を竦めながら無邪気に笑うリサは、とても来月には自分の子を生むとは思えないほど少女のように愛らしい。
ジルベールは愛しい妻をさらに強く抱き寄せ、我が子の居るお腹に置かれたリサの手を包み込んだ。
「贅沢か」
「ふふ、はい。とっても」
「よし、約束だ。出産前にもう1度、あのバラ園へ行って大輪の白バラを見よう」
「はい」
嬉しそうに綻ぶ口元に、ちゅっと羽のように軽いキスを落とす。
上目遣いに睨んでくるリサの顔には「またこんな所で…」と書いてあるが、ジルベールはその言葉にしない抗議に気付かぬフリをして、今度はしっかりと唇を合わせた。