おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

側には紋章が入った立派な四頭立ての真っ赤な馬車。馬は四頭とも白馬だ。
さらにその前後には、真っ黒な馬に乗った騎士団のような軍服を着た男達が列を成している。

そして目の前にいる、金髪のとんでもないイケメン。

背中に手を添えてくれているその男性は、目を覚ました梨沙が固まっているのを怪訝な表情で見つめている。

「大丈夫か?なぜこんなところで倒れていた?」

低すぎない甘い声が近くで響く。

しかしその質問に答える余裕は梨沙にはない。

「その格好、レスピナードの城のメイドか?」
「レスピナード…」

聞き覚えのある単語に反応する。

「送っていこう、立てるか?」

梨沙が働いていたメイド喫茶の名前だが、まさか馬車で店に送ってくれるわけではないだろう。

目の前で立ち上がり手を差し伸べてくれる男性―――ジルベールを見上げる。


(あれ、なんだか…どこかで見たことがあるような)


そうは思ったものの、梨沙に外国人の知り合いはいない。

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