おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~
襟が大きく立ち、前身頃が短く後ろ身頃が膝近くまで長い燕尾型の赤い軍服に金色の肩章、青いサッシュ。真っ白なズボンに膝下までの黒いブーツをはいている。
じっと見つめるだけの梨沙に業を煮やしたのか、ジルベールは梨沙を素早く抱き上げると、近くに停まっていた馬車に乗り込んだ。
「きゃっ、えっ、あの…」
間もなくしてがたんと音を立てて馬車が動き出す。
小さな窓から見える景色は、やはり何度見ても日本とは思えない。
ーーーー間違いない。これは夢だ。
絵本を読みながら寝てしまったせいで、若干ファンタジー色の強い夢を見ているらしい。
梨沙はそう結論付けると、向かい合わせに座っているジルベールを見つめた。
メイド服を着ている自分と、軍服のような格好の彼。
まるでハロウィンのコスプレパーティーみたいだと梨沙は可笑しく感じた。
さらにジルベールの隣にはこざっぱりした白のチュニックに黒のズボンを履いた男性も座っている。
その彼もまた眩いばかりの金髪に深緑色の瞳。
ジルベールに比べると多少歳は上なのか、落ち着いた雰囲気に見える。