おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~
「あなたは…王子様?」
あまり詳しくはないが、衣装の軍服に勲章のメダルがたくさんついているところを見ると、偉い人の役なのかなと思う。
なにより雰囲気が王子様だ。
これが役作りというやつなんだろうか。
「……あそこに倒れていたのはそれが狙いか?」
急に目の前に座るジルベールの声が低くなった。
どういう意味か分からずに首を傾げる。
「今日の夜までに王子が城へ向かってくると知って待ち伏せていたのか」
どうしよう。梨沙は自分が見ている夢なのに、登場人物が何を言っているのか意味がわからず戸惑ってしまう。
「それだけ愛らしければ主人の花婿候補に見初められると踏んだのか。あそこで倒れておいて、助けてもらい顔を売る気だったか?」
「……花婿?」
「そうなれば、君は一体なにを望む」
突拍子もない梨沙の夢は展開も早いらしい。それになぜか急に言葉に棘を感じる。
それでも精一杯会話についていこうと、じっと目の前の男の言葉に耳を傾ける。
「側室になれば欲しいものは何だって手に入るとでも思ったか」
「そ…っ、側室?!」
思わず素っ頓狂な声を上げた。
聞き慣れない単語ではあるが、意味は知っている。