おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~
一夫多妻制の夫婦関係において、正妻以外の女性のことだ。
つまり、お妾。
何の話の展開でそんな単語が出たのか未だに理解は出来ていないが、側室になりたいのかと聞かれればハッキリと否定したい。
それでも元来自分の意見を口にするのが苦手な梨沙は、ぶんぶんと首を横に振るだけしか出来ない。
そんな彼女の態度をどう受け取ったのか、ジルベールの眉間に深く皺が寄った。
「…正妃じゃないと不満とでも?」
そうじゃない。
そういうことではなくて…。
梨沙は自分の口下手をもどかしく感じながら必死に言葉を紡いだ。
「私が望むのは、私だけの家族です」
正妃とか、側室とか。
いくら夢の中だって一夫多妻制だなんて冗談じゃない。
梨沙は憤慨する気持ちを押さえてゆっくりと否定した。
「家族…?金や地位は…」
目の前の男の顔に『信じ難い』と正直に書いてあるようで苦笑する。
夢の中でくらい、しっかりと自己主張してみよう。
ここで練習したところで、現実で役立つかどうかは置いておいて。