おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

密着していたのが恥ずかしくて顔を上げられない。

梨沙はジルベールのようなイケメンどころか、普通の男子とも付き合ったことがない。

クラスの友達はもう彼氏がいたり、バイト先の大学生に片思いをしていたりと、女子高生らしく恋愛を楽しんでいたが、梨沙はなかなか周りのように恋を謳歌出来ないでいた。

そのせいか、ちょっと身体を抱き止めてもらっただけの接触でこんなにも動揺してしまう。

意識しすぎなのがバレたら恥ずかしいのに、すでに真っ赤になってしまっている顔を見られるのも困るので俯いているしか出来ない。

そのまま無言でガタガタと馬車に揺られること15分ほど。

梨沙は俯いてメイド服のエプロンのフリルだけをじっと見つめていたせいで、ジルベールがじっと梨沙を見つめていたことも、彼の隣に座る穏やかそうなイケメンがニコニコと可笑しそうに笑っていたことも、全く気が付かなかった。




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