おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~
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馬車から降りると、目の前にそびえ立つ大きなお城に圧倒された。
馬車を出迎えたお城の人に案内されていったイケメン2人や大勢の騎士団と別れ、梨沙は城の前の石畳を歩く。
(このお城…、見覚えがある)
石造りのメルヘンチックな白亜の美しい佇まい。
目の醒めるような青色の屋根。西にある大きな塔。
ロマネスク様式の外観はまるでおとぎ話の絵本に出てくるお城そのもの。
この夢、もしかして…。
ある予感に胸を高鳴らせていると、城の中からパタパタと走り寄ってくる人影。
「リサ!やっと見つけたわ!」
身長は梨沙と同じか少し高いくらい。
鈴を転がすような声とはこういう声かと納得してしまうほど、澄んだ美声で名前を呼ばれた。
ふわふわにカールした綺麗なブロンドの髪を靡かせ、大輪のバラを思わせる濃いピンク色のドレスを着た美しい女性は、梨沙を見つけぷくっと頬を膨らませている。
ドレス姿の女性に名前を呼ばれたことに驚いていると、急にぎゅっと抱きつかれてさらに戸惑いが大きくなった。