おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

(とはいえ…これは夢だからそこまで真剣にならなくたっていいんだけど)

「リサが気にしているその黒髪、私はとても綺麗で素敵だと思うけど。私のフリをしてもらうのだから、この髪の色のウィッグを用意させたわ。だから安心して?」

にっこりと笑ってみせるシルヴィアは本当に華のある綺麗なお姫様。間近で見るとため息が漏れてしまう。

梨沙はずっと憧れていたお姫様を目の前に、かなり興奮していた。

今はまだ、この夢を見ていたい。

梨沙はシルヴィアの提案を受け入れるように、ゆっくりと頷いた。



◇◇◇

その日の夜。
梨沙は"侍女のリサ"に与えられている別棟の部屋にさがったものの、眠る気になれなかった。

小窓側にシングルサイズよりも小さそうなベッド、扉側の壁に50センチ四方ほどのテーブルと椅子が1脚。テーブルには水差しと洗顔ボウルが置かれ、足元には掃除道具の入った木製の箱がある。
その隣には4段ほどのタンス、壁の上部には衣類を掛けるための突起がいくつかあり、シャツやスカートが掛けられていた。

梨沙はベッドに腰掛けて小さく息をつく。
このまま眠ってしまえば、『ひまわりの家』の自分の部屋で目が覚めるんだろうと思われて、それはなんだかちょっともったいない気がしたのだ。

せっかく大好きな絵本の世界の夢を見ているんだしと、梨沙は城の中を自由に動き回ることにした。


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