おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~
リサの部屋のベッドに置かれていた真っ白な薄手のワンピース。
シュミーズと呼ばれる部屋着を拝借することにしてメイド服を脱いだ。
ワンピースに着替えて部屋を出る。
この部屋は別棟の3階。使用人の部屋が続く廊下を抜けて、渡り廊下のような場所を通って城の本館へ向かう。
昼に入ったシルヴィアの部屋や彼女の父である公爵の過ごす居住区がここ本館の3階。ひとつ下の2階はすべて客間となっており、貴賓室など城を訪れた人のためのフロアになっている。
先程のジルベールや騎士団のような恰好をした人達も、2階のいずれかの部屋を使っているだろう。
別棟も窓の木枠に細かい装飾が施してあったり赤絨毯が敷いてあったり豪華だと思っていた梨沙だが、ここは別次元なほど豪華な造りで圧倒されてしまう。
壁や柱は真っ白で、天井にはフレスコ画が広がっている。
まるで映画の世界みたいだと小さく呟き、絵本の夢だったとひとり訂正する。
(やっぱり…、私この城を隅々まで知ってる…)
自分が作り出した夢のせいなのか、どの扉が何の部屋で、どの通路が何の場所に繋がっているのか、梨沙としては初めてみる景色なはずなのになぜかすんなりと理解出来る。
赤絨毯の敷かれた段差が小さくて幅の広い階段を上ると、そこは豪華絢爛という言葉がピッタリな大広間。
4階から5階が吹き抜けになっていて、中央の天井からは軽自動車よりも大きなシャンデリアが吊られている。
壁は金色と青色がメインで装飾されており、左右に大きな螺旋階段。その奥には大理石で作られた10段程の階段があり、王様が座りそうなド派手な椅子が置いてあった。
目がチカチカするほど壮麗な広間から引き返し1階まで降りると、そこは城に仕える使用人たちの働く場所で、とても大きな調理場と、さらに奥はランドリールームになっている。