おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

思いも寄らないジルベールの行動に、リサは真っ赤になりながら辺りに誰もいないかキョロキョロと見回した。

「こ…っこんなところで…!」
「リサが可愛すぎるのが悪い」
「そっ、私はなにも…」
「騎士団の連中が今の俺を見たら腰を抜かすだろうな」

声を上げて笑うジルベールの横顔を見上げ、リサは恥ずかしいと感じながらもたまらなく幸せになる。

ブロンドのウィッグの髪に触れ、ジルベールはため息を落とす。

「この扮装では、リサの美しい黒髪に触れられない」

少し不満そうに言う彼に申し訳なく思いつつ、自分はシルヴィアの扮装をしていない限りジルベールとこうして城内で親しく話をすることは出来ないと思うと、胸がぎゅっと痛んだ。


ずっとこのまま一緒にいたい。
そんな望みを口に出してしまいたくなる。

右手を繋がれたまま歩く中庭。いつも夜に会う時は上段の外れにあるバラ園だが、今は下段まで下りて噴水から吹き上がる飛沫が太陽の光に反射しきらめく様を2人で眺めている。

ふとリサがバラ園に目をやると、そこにはメイド服姿のシルヴィアと従者のローランの姿があった。
2人でなにやら話している様子は、どことなく楽しそうに見える。

ローランもジルベールと同様、長身に輝く金色の髪を持ち、深緑色の瞳は優しげにシルヴィアに向けられている。
メイド服を着ていても可憐さや上品さを失わないシルヴィアの頭にぽんぽんと手を置き、それを彼女も嫌がっている素振りは見えない。かなり打ち解けている様子が見受けられた。

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