本能で恋をする~again~
近くの居酒屋で一人、飲んでいると、


「おい!ヤベーよ!外!修羅場、修羅場!」
と居酒屋に来ていた他の客の声がした。
「マジで!?」
「あぁ、しかも美男美女!女の方は絶世の美女!」

絶世の美女―――?
まさか凛音?
「まさかね…」

「しかも美女は人妻!」
は――――?

「おい!その女どこにいる?」
「は?なんだよ、お前!」
「いいから、教えろ!!」
俺が凄い剣幕だったのだろう。少し怯えながら教えてくれた。
「すぐそこの、イタ飯屋の前……」
俺は千円札をバン!と置いて、居酒屋を出た。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
駆けつけると凛音が、泣きながら相手の男に訴えかけていた。

「――――――嘘つかれてた悲しみとか、馨くんの言葉が私にだけじゃなかった苦しみ、それを気づけなかった自分への悔しさ。色んな痛みがあったんだよ。
なのに今さら…………
海斗だったらこんなことしない!!!」


こんな乱れたように怒る凛音は、あまり見たことがない。

「凛音…?」
「え?海斗……」
凛音がびっくりしたように、俺を見た。
「凛音?どうしたの?」
その顔があまりにも苦しく歪んでいて、俺は静かに聞いた。
「海斗ぉ……」
また涙が溢れでて、俺の方に来ようとする。
「待って!凛音!」
相手の男が凛音の手を掴む。
「離して…」
「凛音」
「私の名前を“凛音”って呼ばないで!離して!!」
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