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衝撃だった。

一言で表すならば、それが一番適しているだろうか。まだ肌寒い日、冷えた空気がぽっかり開いた口の中で熱に変わる。
当たり障りのない、始まりの日。見知った顔に囲まれたその教室の中で、少年はただ一つの存在に目をー心を奪われた。目を奪われていたのは少年だけではなかったが、その時の少年にはいつもの景色は見えていない。ただ一つ、教室の一番後ろから見える小さい小さい存在は、まるで色付いた花弁のような。いや、あるいは光り輝く天使のようなー兎に角、それが少年にとっての衝撃である事は明白だ。
少女は促されるまま、教壇へと上がる。華奢な体を揺らし、凛とした黒い瞳を全体に向けーどこに向かってでもなく、その口を開く。

「…佐野、紫苑。…よろしくお願いします」

どこにでもあるような、単純なお話だろう。
少年はその日、自分の教室へと転校してきたその凛とした少女に、恋をしたのだ。


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