あなたの声が聞きたくて
バス停に着くと、さっきハンカチを拾ってくれた青年がいた。

彼をじっと見つめていると、視線に気づいたのか、彼もこちらを見つめてきた。

私が青年に対し会釈をすると、彼もペコッと会釈を返してくれた。

彼も大学生なのかなと考えていると、定刻通りにバスが来た。

私はバスに乗り込むと、いつも通り1番後ろの席に座る。

耳が聞こえない私にとって、周りの様子を知る方法は視覚しかない。

だから、周りを見渡せるように、1番後ろの席に座る。


バスに揺られていると、終点が近づいてきた。

スーツ姿のサラリーマンや制服を着た学生はすでに降りていて、今乗っているのは、終点を目指す大学生だけ。

その中には、さっき親切にしてくれた青年もいたけれど、あえて気にしないようにしていた。

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