ただ、一緒にいたい
*****愛月 side*****
震えている私の頭を撫でた、彰くん。
そして、生島さんを囲んでいる人達の所に真っ直ぐ向かって行く。

そこには私の知らない、今まで見たことのない彰くんがいた―――――

高校生の頃の彰くんは、少しひ弱でビクビクしていた。その事で、いじめの対象になったと言っても過言ではない。
でも八年経った今、ビクビクおろかむしろ何の感情も見えない。

この人は誰?
私の知らない人?


怖いとゆうレベルではない。
彰くんの存在全てが恐ろしかった。
永遠に続く地獄に落とされたような、恐ろしさだった。
離れている私でさえ、恐ろしいのだ。
実際にその彰くんを受け止めている、あの人達はどれ程のものなのだろう。

再び山科さんが私を背中に隠し、前を向いたまま、
「愛月様、耳を塞いでて下さい」
「え?」
「きっと彰様はあなたにだけは、見られたくないはずです。かといって、俺達も彰様を止められません」
「あの……」
「お願いします」
山科さんの悲痛な言葉が、胸に刺さる。
「わかりました」
両手で耳を塞いだ。
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