ただ、一緒にいたい
兄貴と仕事の話をしていると
バン―――――!!
「ボス!!」
「あ?何だ!ノック位しろ!?」
「すんません!でも愛月様が!!」

「あ?愛月!?」
「あずちゃんが何だ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「彰様!早くこちらへ!」
「……」

「彰様!私がついていながら…申し訳ありません!」
山科が車に乗り込もうとする俺に、頭を180度以上折る勢いで謝ってくる。
「お前の処分は後からだ……お前も来い…!」
「はい!」
「岸!とにかく急げ!」


「愛月、すぐ行くからね……」


「愛月様が深村に拐われて、アイツ…彰様に謝罪しろと……」
愛月が、拐われたと言う部下からの報告。
一瞬、夢かと思った。
こんな地獄に落とされたような感覚。
地獄なんて何度も見てきたはずなのに、なんとも言えない恐怖に包まれていた。

やっぱり俺は愛月に会ってはいけなかった。
こんな事態になることは、想像ついていたはずだ。

わかっていたはずなんだ。
でも
でも
でも……
会いたくて、会いたくて、会いたくて…………
あの柔らかな優しい笑顔を見たくて、会いに行ってしまった。
会ってしまうと触れたくなって、触れてしまうと離せなくなった。

ごめん、ごめんね……愛月。
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