どうも、悪人専用殺し屋です
「いーつきっ。こっちは終わったよ。伍樹は?」
俺は篤樹に先を越されたことを歯痒く思いながらターゲットに最後のとどめを刺す。周りに鮮血が飛び散る。
「ターゲット死亡。任務を完了したため今すぐ本部に戻る。」
『了解』
そして少年たちは夜の街に消えていった。


俺・志田伍樹と双子の弟・篤樹は孤児だった。
親を幼い頃に殺され孤児院に引き取られたが、俺たちの扱いは散々だった。俺と篤樹はオッドアイだった。俺は右目が水色、左目茶色で、篤樹が右目茶色、左目水色だった。そのせいで俺たちは大人からも子供からも気味悪がられ、そして最悪の事態が起きた。俺たちが十歳の時、オッドアイを売りにオークションに売り出された。こうも大人たちが心のない奴らだとは思ってなかった。俺は心の何処かで大人たちもいざとなったら助けてくれるはず、と甘い夢を見ていた。俺は人生の終わりを感じた。せめて篤樹だけは生かしてあげたい。そう思い篤樹に「逃げろ」と言ったら俺は篤樹に諭された。「伍樹は俺の片割れだ。俺も伍樹の片割れだ。だからどっちが生き延びるなんて残酷なこと俺できない。伍樹が死ぬ時は俺も死ぬから。」
初めて声をあげて泣いた。悲しみというより申し訳なさが先にたった。篤樹は俺が泣き止むまで何も言わずに背中を撫で続けてくれた。
そして、オークション当日。俺たちは檻の中に閉じ込められ、随分と誇張された紹介を受け幕が開いた。その一瞬で俺の心は恐怖に染まった。
俺たちをなんとしてでも買い取ろうとする汚い大人たちのギラギラと光る眼。一億から始まり二億…三億…と額はどんどんと増えていく。ついに十億で止まり俺たちの「飼い主様」が決まった。垣間見えた「飼い主様」は欲に染まった男の顔をしていた。恐かった。俺は篤樹を抱きしめ今出来るありったけの抵抗をした。その時、遠くの方でとんでもない額が聞こえた。
「一兆でその子らを買い取る。」
一兆…?実際にあるかどうかも分からない夢のような額に俺の脳は麻痺する。一兆ってどれくらいだったっけ?と今の状況を忘れるほどの額を誰かが言った。周りがざわめく。さすがにそれ以上の額を出せる人はいないようだった。俺はまた恐怖に駆られた。またあの眼を、あの欲に塗れた眼を見るのか。俺はぎゅっと目を瞑った。人の気配を感じそっと目を開く。そこには欲に染まった人の顔ではなく、ただ俺たちを人間として見ている、俺たちをまっすぐに見つめて手を差し伸べてくる人がいた。歳は十代半ばといったところだろうか。少なくとも俺たちとそんなに歳は変わらない顔立ちをしていた。
「君たちが伍樹くんと篤樹くんだね?」
俺は声を出そうとして出せないことに気づいた。ショックで声が出なくなったのだ。俺はこくりと頷く。彼はニコッと笑った。まだその顔に幼さを感じる笑顔だった。
「僕は都合上名前は言えない。だから代わりに
『ボス』と呼んでくれるかい?」
歳のわりには言葉の使い回しが大人な気がした。すると今まで一言も喋っていなかった篤樹がいまにも消え入りそうな声で「ボス」と呼んだ。その声が聞こえたのかボスは篤樹の方を向いてふわりと微笑んだ。俺がこの10年の人生で最も綺麗な笑みだった。こうして俺と篤樹とボスの新しい生活が始まった。
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