この曇り空は私と似ていた
大きさ的には二人で運べるのか心配だけど、近所に頼れる人がいるわけでもないし、仕方がないだろう。

「せーの!」

母の掛け声と共に、私達はピアノを持ち上げる。

思ったよりずっしりとしていて、持ち上げるのも一苦労だ。

その時、外で風がビュンビュンと音をたてて、強く吹き始めた。

「ちょいと降ろすわよ」

母にそう言われて、私達はピアノを降ろした。

「風、強そうだね」

「また今度にしよっか」

母は呑気に言って、手ぶらで家の方へ戻る。私もそれについていった。


翌日の昼過ぎ。空は相変わらずの曇り空だ。

私は今、とても焦っている。空白になっている記憶をいまだに思い出せていないからだ。

時は二時半。どれぐらいの距離があるかわからないし、早めに家を出た方がいいだろう。

そもそも"あの場所"の正体がわからなければ、いつまでもたどり着けないじゃないか。

言ってくれたらいいのに。どうして答えを明かしてくれないの。見つけれないの。

朝に部屋中を部屋の掃除をするついでで、何か記憶に関する物はないかと探していたのだが、全然見つからなかった。
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