この曇り空は私と似ていた
「だよな。ピンクのはコスモスってわかるんだけど、もう一つはわからないんだよな」

少年はそう言って頭をかかえる。

コスモスの花言葉は「優美」。私はこの頃、臆病な優等生だったので、そんな私にぴったりの花だと思った。

もう一つの花の名前はなんだろう。見たことのない花だ。だけど淡い青色の花びらからは優しい感じがした。

「じゃあ、名前を知れた時に、また来よう」

「そんな、別れるんじゃないんだからさ」

少年はそう言って、冗談だろうと笑う。

もし離婚というのが本当ならばこの少年はどっちに着いていくのだろうか。厳しくておしゃれ好きな母か、子供思いだけど浮気をしてしまう父か。

「ねぇ、離婚するならどっちに着く?」

私なら迷わず、母に着いていく。母は私にたくさんのことを教えてくれた。料理や洗濯、掃除の仕方まで。

料理はまだ始めて一年半だからもう少し上達させた方がよいだろう。それに家計簿やスケジュール帳の付け方とかも習いたい。そうすればきっと自立するときに役立つから。

「俺は父さんかな。ピアノもバレーも教えて貰ったからもっと上手くなりたい」

少年は目を輝かせながらそう言う。

「じゃあ、お兄ちゃんとは離ればなれだね」

父とも少年改め、兄とも離れてしまうなんて寂しい。生まれてきてからずっと、一緒に暮らしてきたのに。

「お兄ちゃんなんて、俺達は双子だろ?同じ日に生まれてきたから兄妹とか関係ないよ」
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