この曇り空は私と似ていた
そう。私達は僅かな時間差で同じ日に生まれた、いわゆる双子だった。

生まれてきてからずっと一緒で、私が作った料理を美味しいと言って食べるお兄ちゃん。時にはピアノを聴かせてくれた。

兄がでるバレーの試合に家族と行ったこともあった。彼には才能があり、小四のわりにはチームのエースになっていた。特にサーブは強烈で、目にも止まらぬ速さでボールを打ち、相手から点数をもぎとっていく。

そのおかげで大会で優勝をとっていたことも数えきれないほどあった。

そのことから父に着いていく理由は充分に理解できた。

「じゃあ、美華吏?」

「前からそう呼べっていってるだろ?」

そう言って美華吏と名乗る兄は、私の頭をわしゃわしゃと撫でる。

少しくすぐったい。だけど不思議と優しさを感じた。

「俺のこと、忘れんなよ。清加」

寂しそうな目で私の頭を撫でながら美華吏は言う。

「忘れるわけないよ。約束する。美華吏」

私はそう言って寂しいのを我慢するように無理矢理笑顔を作った。

忘れるわけがない。私の大切な家族なんだから。

そう思いながら空を見上げると、さっきの夕陽はもう沈んでいた。というか、雲がかかってきていたせいで見えなくなっていた。その雲の色は寂しい灰色に染まっていた。
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