この曇り空は私と似ていた
私はそう言いながらジーンズのポケットから写真を取り出して見せる。

淡いピンク色の花を咲かせたコスモス。優しい青色の花を咲かせた名知らぬ花。その二種類の花が鮮やかに一面を彩っている。

その真ん中でピアノを弾いている、小四の頃の美華吏の写真。

髪の長さは違うけれど、やっぱり美華吏はあの頃の面影を今も残して生きている。

「あの倉にしまったピアノ、まだあったんだ」

嬉しそうな顔をしながら美華吏は言う。

「メロディは母が作った子守唄だったんだね。有名な曲かと思ってた」

「あれ、いいメロディだよな」

そう言って二人で笑いあう。

美華吏に再会できてよかった。もしも思い出した時がもうちょっと遅かったら、こんな幸せな時間という奇跡は、訪れなかったかもしれない。

「この花の名前、知ってるか?」

美華吏はそう言いながら、青色の小さい花をたくさんつけ、川岸でひっそりと咲いている花を指差す。

もちろん、その花の名前はまだ知らない。

私は首を傾げた。

「勿忘草だよ。花言葉は『私を忘れないで』」

勿忘草とつけられた花は、爽やかな秋風に揺られている。
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