この曇り空は私と似ていた
小四の頃に交わした約束と一緒だ。私はあの約束を守れなかった。でも、五年という時をえて、ようやく思い出した。

「ありがとね。私に思い出させてくれて」

そう言って満面の笑みを浮かべる。

「ああ。思い出してくれてありがとう」

きっと今までのことがなかったら私は一生、思い出せなかっただろう。思い出したとしてもその時に、美華吏は近くにいないかもしれない。そしたら一生、後悔することになっていただろう。

それはさておき、幼い頃に旅行によく連れていってくれた父は元気だろうか。

「父は、あれからどう?」

「それがさ……」

美華吏は急に寂しい顔をして言う。

きっと良からぬことでもあったのだろう。

「清加が自殺しようとしていた前日に、流行り病で亡くなった」

私は衝撃のあまり息を飲む。

でも私の記憶を失わせた、そして浮気をしついた悪者だからざまあみろと思った。

「これからどうするの?」

父が亡くなったということは、今は一人暮らしということ。寂しいだろうし、受験生ということもあるから大変だろうに。
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