この曇り空は私と似ていた
「そこで一つ提案なんだが、一緒に住ませてもらえないか?」

美華吏は顔の前でお願いと手を合わせながら言う。

確かに私達はまだ社会人ではない。一人で生きていけないのは当然だ。金がなくなるのも時間の問題だろう。

私はいいとして母はそれを承諾してくれるのだろうか。厳しくておしゃれ好きだからわからない。

「やっぱりここにいた」

噂をすれば母が林を抜けたところに立っていた。

どうしてここにたどり着けたのだろうか。思い当たる理由は一つだけ。小四の時もここに迎えに来てくれたからだ。

「遅いから迎えに来ちゃった」

そう言って私達の所に駆け寄ってくる母。どうやら私の隣にいる美華吏には気がついてないらしい。

「お疲れ様。遠かったでしょ?」

私はそう言いながら腕時計を確認する。

ちょうど四時半だ。そろそろ帰らなければ陽が暮れてしまうので、グッドタイミングだと思った。

「私をなめないでよ。って……美華吏!?」

母はそう言って口をあんぐり開けている。

それもそうだろう。生き別れで五年も離れていた実の息子にやっと再会できたのだから。

「久しぶり。母さん」

美華吏は花開くような笑みを浮かべる。
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