この曇り空は私と似ていた
揚げ物は久しぶりだから上手くできるかわからないけれど、やってみる価値はある。

「それなら早く言ってよーもう。これからよろしくね。美華吏」

どうやら美華吏の話は終わったらしく、母が握手と手を差し出している。

「よろしくお願いします。ほら、清加も」

私は一瞬戸惑う。握手とか美華吏がいるからか恥ずかしく感じる。だけど母もしてるし、一緒にならいいだろう。

それに私達は一度生き別れたけれど、こうやって再会できた家族。まだこれからどうなるのかわからないけれど楽しく暮らせていけるような気がする。

「改めてよろしくね。美華吏」

そう言って私達は手を取りそれから微笑を浮かべて同時に手を離した。


その日の夜。私はささみの唐揚げを作った。

ささみを一口サイズの大きさに切り、パン粉ととき卵で衣をつけ、油で揚げていく。

久しぶりだったけれど、作り方は記憶喪失が治ってきたおかげで思い出せた。

いい感じに焼き色がついてきたら、サラダと唐揚げにかけるレモンと一緒に、皿にもりつけて、あとは炊飯器で炊いた白米を茶碗によそえば完成。それをテーブルに並べ、席に着く。

「わー。懐かしの清加の唐揚げだ!」

美華吏はわくわくした顔でそう言って席に着く。
< 121 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop