この曇り空は私と似ていた
私はその様子が可愛く見えて、噴き出してしまった。

「ふふっ。よかったわね。喜んでもらえて」

母は噴き出しながらそう言って、私にウインクする。

もう、彼氏じゃないんだから。と少しムカつきながらも緑茶を入れたコップを持った。

「では、家族の再会を祝しまして、カンパーイ」

「カンパーイ」

その声と同時に触れ合ったコップ同士がカチャリと音をたてる。

それから私達の新しい生活は、始まりを告げるのであった。


翌日の昼休み。空は雲ひとつない青空が果てしなく広がっていて、風も心地いいほどに吹いている。私達は中庭の芝生の上でお弁当を食べていた。

「じゃあ、今度こそすべて思い出したのね」

七生は私の昨日の話を聞いて、厚焼き卵を頬張りながら言った。

「兄のこと、全然口に出さなくなってたからわざとそうしてるのかと思ってた」

陽果はすっきりとした笑顔を浮かべながら言う。

確かにもし覚えていたままだったら、臆病な私のことなので美華吏と離れてしまった悲しみや寂しさを思い出したりしないよう、そういうことをしていたかもしれない。

「ま、臆病な清加のことだからあるかもな」
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