この曇り空は私と似ていた
美華吏はそう言いながら、昨日の残りの唐揚げを美味しそうに一つ食べる。

私がそれに苦笑いをしていると、

「あの、ちょっといいですか?」

後ろからそう声をかけられて振り替える。

咄嗟に私は息を飲んだ。そこには美華吏のことが好きで少し前までは、私の鞄や上履きや筆箱を毎日のように盗んでいた、佳奈がいたからだ。

七生と陽果がそのいじめを止めてくれた時には、こんなことしてる自分がバカだったとか言っていたけれど、今頃にまた話にきたということは何かがあるのだろうか。

「記憶、思い出したんだよね?」

佳奈は確認するように聞いてくる。

佳奈は私が記憶喪失になる前も同級生であり、よく愚痴を聞いていた。バスケが得意でよく部長を頼まれていた。

私はゆっくりと頷く。

「そのことなんだけどね、実はその……いじめは美華吏君のことが好きでやってたわけじゃないの」

私は思わぬ言葉に目を見開いた。

その一方で、美華吏は俺のこと好きだったの?って言ってそうな顔をしている。どうやら初耳だったようだ。

好きでなかったのなら、どういう理由で私をいじめたのだろうか。いじめが悪いことであるのに変わりはないが、理由は知りたい。
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